社員の給料を毎年アップさせるのは大変なことです。
特に社員数の少ない中小企業は会社の業績(利益)が昨年と同じであった場合は、理屈では昇給は全くできないという計算になります。昨年と同じ業績であれば、人件費の総枠(全従業員の給料の合計額)も昨年と同じであると考えるのが普通だからです。
一方で社員の年齢分布が新人から定年直前まで、ある程度均一の社員数の多い企業であれば、会社の業績が前年並みであれば、一年後には一つ年齢が上の先輩の給料と同等額を貰うことがでるという理屈になります。毎年定年退職者がいるので小学校や中学校のように、卒業生がいて自分達も進級するという考え方です。人件費の総枠が増えなくても一人ひとりは昇給できるのです。
そういう意味では新人から定年まで均一の年齢分布である企業の方が毎年、昇給しやすいと言えます。
ただし経営には人件費だけではなく設備投資費や新規ビジネス展開費など新たな出費も必要となります。そう考えると実際はどんな企業でも「現状維持」では厳しく、継続的に成長し続けなければいけません。つまり給与をアップさせるためには会社の収益アップが大前提となるのです。
昨今の給与・人事評価制度作成のコンサル会社の多くは、導入の費用を低く抑えて(あるいはゼロで)ご提案して、継続的な費用を請求する手法をとっています。継続的な収入はコンサル会社にとって、とてもありがたいからです。
しかし、それは本当にクライアントのためになっているでしょうか?
中小企業の人事評価業務はエクセルがあれば十分なのです。リニューアルのたびに費用が発生する専用ソフトは必要ありません。そして、重要なことは自分たちで、自分たちの組織体制に合わせて人事制度も臨機応変に変えることです。
特に中小企業は、短い期間で組織体制が変わることがあります。業績のアップ、ダウンも激しい場合があります。半永久的にコンサルに頼るのではなく、自分たちで人事評価業務の本質を理解して、自分たちで運用できることが重要です。
弊社では、お客様に合った(確実に運用できる納得の)給与・人事評価制度を作成して、なおかつ運用面でのアドバイス、さらには無料のアフターケアも行っております。
ご希望とあれば、良い給与評価制度を作成した後も継続的に人材育成などのサポートも行っておりますが、やはり基本は「自社で運用できること」だと考えております。
人は教育によって成長します。教え方が上手であれば、それだけ成長も早くなります。逆に教育が全くなければ成長はあまり期待できません。
多くの中小企業には、わざわざ教育プログラムを組んで体系的に教育をする時間的・金銭的余裕がありません。時間や予算がないので教育は本人のセンスと先輩の面倒見の良さに期待しているといったところでしょう。しかし、これでは全く成長しない人もでてきます。それを本人の責任だけにしてはいけません。やはり、どんな小さな会社でも、簡単でもいいので人財育成体系が必要なのです。
低予算で効果的な人財育成ツールの例として、業務(やらなければいけないこと、知っておくべき知識など)に関するレベル別チェックシートがあります。
このチェックシートは業務に関する項目、その目的、関連資料、教材のリンクなどが一目で分かる一覧表です。そして、役職ごとにレベル分けをして作成します。
このようなチェックシートをつくるのは面倒な作業かもしれませんが、一度作ってしまえば、人財育成の基本教材になります。自分の役職(レベル)のチェックシート項目をクリアすることを目標に日常業務を実施すればよいのです。つまり、「自分は何をしなくてはいけないか」を意識することができます。そのヒント(教材)もチェックシートにリンクされています。
チェックシートという基準を作れば、人財育成活動を本人や先輩のセンスではなく、標準化した体系にすることができるのです。
会社(部門、個人)には必ず「業務に関する目標」があります。
みんながその目標に向かって前進しています。
経営者や管理職社員は自分が掲げた目標が果たして正しいのかを常に思考していると思います。的外れな目標に向かって組織が動いてしまったら大きな損失となるからです。
例えば、10人のグループが砂漠の真ん中で迷っていたとします。のどがカラカラで「水」を求めてどの方向へ動けば良いかという問題で悩んでいます。南へ行くか北へ行くか、あるいは東か西か...
今ある情報や可能性をフルに考えて答えを導き出した結果、グループリーダーは「南」へ移動することに決めました。
目標は「南」です。
この南へ移動するということに対して残りの9人もリーダーの決定に従い南へ移動しました。
その結果、無事「水」がある場所までたどりつくこともあれば、残念ながらいくら歩いても水が見つからないこともあるでしょう。
すべてはリーダーの決定した「南へ向かう」ということにかかっています。
つまり「目標」次第ではみんな死んでしまうかもしれないのです。
今度は同じテーマでグループが4つあったとします。そして、それぞれのグループは次のような特徴があります。
グループA:優秀なリーダーとチームワークの良いメンバー
グループB:優秀なリーダーとチームワークの悪いメンバー
グループC:無能なリーダーとチームワークの良いメンバー
グループD:無能なリーダーとチームワークの悪いメンバー
どのチームの生存率が一番高いと思いますか。(一番たくさんの人が「水」までたどりつくか)
答えはAです。
優秀なリーダーが正しい目標を設定して、その正しい目標に対してチームが一丸となって行動をすれば「水」までたどりつく可能性は一番高いはずです。
それでは、一番ダメなチームはどれでしょうか。
答えはCです。
グループCはリーダーは無能だけどチームワークが良いので皆一生懸命無能なリーダーが設定した目標に向かって移動をします。しかし、無能なリーダーが設定した目標は間違っているので残念ながら全員「水」にはたどりつけずに死んでしまうでしょう。
グループBはリーダーが正しい目標を設定してもチームワークが悪いので何人かはリーダーの設定した目標と違った行動をします。その人たちは「水」にたどりつくことができません。
グループDはリーダーが間違った目標を設定しますが、チームワークが悪く、みんな好き勝手な方向を歩みます。その結果何人かは偶然「水」にたどりつくことができるでしょう。
この話のポイントは「どんなにチームワークが良くても目標が間違っていたら悪い結果につながる」ということです。つまり「目標設定」はそれだけ重要なのです。
目標を設定するのは経営者や部門の責任者たちです。
経営陣が無能であればみんなが一生懸命間違った方向へ動いてしまうということになります。
給与は労働の対価として支給します。この労働が正しい目標へ向かっているものかどうかで会社の人件費に対する効果(利益)が大きく変わります。
「正しい目標設定」を大前提に、給与(人事考課)はその目標達成度(成果)を十分に考慮される制度が望ましいと思います。
給与体系作成の最初のステップは「給与体系のストーリー」を考える作業です。
たとえば年齢とともに徐々にステップアップする給与体系、あるいは年齢や社歴は一切関係なく、その時の成果に直結した給与体系、ユニークな手当でモチベーションを高める給与体系など、考え方はいろいろあります。善悪の問題ではなく、会社の経営にマッチしているかどうかがポイントとなります。そのためには会社の給与に対する方針(考え方)を整理して統一性のある給与体系のストーリーを考える必要があります。
たとえば営業部のAさんには売り上げ実績に直結した出来高制に近い給与体系、そして同じ営業部のBさんには年功序列的な給与体系ということでは会社の方針が明確とは言えません。「ウチの会社は頑張った分だけ支給する。そのかわり、成果が上がらなかった場合は給与も大幅に減る」という方針なのか、あるいは、「一時の成果だけではなく、これまでの経験値や組織全体のバランスを考慮する」という方針なのか、給与体系に関する方針(メッセージ)を決める必要があります。
給与と年齢の関係も一考する必要があります。たとえば、若いうち(新人)は低い給与水準でも30歳頃から昇給幅が大きくなるパターン、あるいは仕事の成熟度に比例して給与も増えて、能力が頭打ちになると給与も頭打ちになるパターン、あるいは新入社員から定年退職まで一般的な生活プランを意識した給与推移になるようなパターンなど、給与の推移についてもいろいろと可能性があります。
給与体系のストーリーは給与に対する会社のメッセージを自由に考える作業となりますが次の6つの視点から自社の状況をイメージしてみると分かりやすくなります。
①どのくらいの成果をだせばどのくらいの報酬を与えるか(給与水準)。
②特に重要な業務、高い成果を期待したい業務はなにか。
③プラスアルファの頑張りや成果に対するインセンティブ、賞与はどうするか(賞与には通常の月給の延長と利益分配という2つの考え方があります)。
④成果がなかなかでない社員はずっと昇給しないか、あるいは最低限の仕事をしていれば年齢とともに少しは昇給するか(給与の推移について)。
⑤部長、課長、といった役職は部、課に一人だけにするか、あるいは役職は部下がいない場合でも仕事の能力や給与額に見合ったように設定するか(組織体制について)。
⑥手当やモチベーションアップに対して何かアイデアはあるか(ユニーク、オリジナルなアイデアについて)。